1.「家族」って、とても面倒なものだ。でも、だからこそとても愛おしいものなのだとも思う。
私的なことだが、今年自分自身が家を建てることもあり、いつになく自分の家族や親戚とコミュニケーションを取らなければならないことが多い。
それ自体は、至極当然のことであり、幸福なことであるはずだけれど、そのコミュニケーションの中で、時折、いや頻繁に、自分自身が生まれ育った家族が見せる“弱さ”や“無理解”に対して、寂しさと憤りを感じる。
それは、僕自身の“弱さ”と“無理解”が露呈し、合わせ鏡のように相手に写っている結果であることは重々承知している。
ただし、それらを認め、何の不満もなく素直に受け入れられるほど、僕も、家族も、完璧なわけではない。
「家族」の中の些細な“ほつれ”は、そのまま些細なものとして消え去ることもあるし、小さな不満が募り不幸を呼び寄せてしまうこともあるだろう。
「家族」の形態は様々だけれど、ほとんどすべての人達は、そういう普遍的な危機感を孕んだ危ういバランスの上で、小さな人間関係を築き、支えあっているのだと思う。
随分と愚にもつかない前置きが長くなってしまったけれど、詰まるところ、この映画は、“四姉妹”を中心とした、「家族」の物語であり、穏やかで優しい時間の流れの中で、彼女たちが根本的な部分で持ち続ける人生の“苦味”を垣間見せる傑作であると思う。
普遍的な人間関係の機微を、極めて細やかに、それでいて卓越した技量で描き出したこの映画は、一つ一つのシーンの意味を言及するほど野暮になる。
ただ、最初から最後まですべてのシーン、すべてのカットが、映し出された瞬間に「名作」のそれだと分かる。
当然ながら、四姉妹を演じた4人の女優は、みんな素晴らしかった。
一見、人気漫画の映画化に際して人気女優たちを集めただけのようにも見える。しかし、実際にこの映画世界の中で息づく彼女たちは、“四姉妹”以外の何者でもなく、それぞれが息づく様をずうっと観ていたくなる。
この奇跡的なキャスティングそのものに幸福感すら覚える。ただそれも、一流の監督のなせる技なのだろう。
4人揃って砂浜を歩いていく姉妹たちの道程は、きっとこの先枝分かれしていく。
その度に彼女たちは、時には「面倒」と思いつつも、悲しみつつ、怒りつつ、相手のことを思うのだろう。
それはきっと、正しい家族の在り方の一つなのだと思う。