1.《ネタバレ》 魔女を描いた映画は多いが、これほどまでに絵画的で様式美に満ちた作品には出会ったことがない。音のメリハリも良く、不協和音で首筋を撫でられる快感は『リング』以来の満足度。
アメリカ入植時代の考証を、ファッションや生活様式だけでなく古い英語にまでこだわって行ったことにも非常に価値があると思う。特に黒山羊のフィリップが人語を操るシーンの、舌先で転がすような響きは蠱惑的ですらあった。
展開は地味だが、登場人物それぞれのモヤモヤが明快なので「家族が崩壊していく様」だけでじゅうぶん引きつけられたし、トマシンが魔女になる決意を明確にセリフで示しているので、バッドエンドの中にカタルシスもある。この先、これ以上の魔女映画はもう出ないと断言できる。