7.《ネタバレ》 内戦に揺れる1940年代のスペイン。社会を支配する苛烈で不条理な男たちの暴力に押し潰されようとしている一人の無垢な少女、オフェリア。それでも彼女には、誰にも負けない想像力という素晴らしい武器があった。迷宮の奥深くで牧神パンと出会い、森の枯れかけた巨木の根元で彼女は醜い大蛙と対峙する。そして、魔法のチョークで描かれた扉の向こうでは、世にもグロテスクな怪物と悪夢のような試練を経る。目的は、永遠の世界でお姫様となること。だが、オフェリアを取り巻く現実はあくまでも残酷だった……。この妄想とも現実ともつかない、モダンでグロテスクな美しさに満ちた世界は、観れば観るほど、まるで何処までも続く深い迷宮へと迷い込むような、そんな気持ちに誘ってくれる。男たちがつぐむ歴史の傲慢さに対抗する言葉として、女性は物語という言葉を編み出してきただろう。そんな普遍的な事実がここにはあまりにも美しく、そして退廃的に描かれている。素晴らしいとしか言いようがない。惜しむらくは、第三の試練。ここも素晴らしい幻想世界で描かれていれば、完璧な大傑作映画となり得たのに。でもそんな不完全さも含めて、僕はこの映画が大好きだ。最後、醜い暴力にその儚い命をも奪われながらも、美しい想像力だけは奪われなかったオフェリアのその切ない笑顔がいつまでも忘れられない。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 10点(2023-04-17 10:33:49) |
6.《ネタバレ》 ファンタジー作品だと思っていたのですが・・・軍と反体制ゲリラとの内戦の前線が舞台で、訳あって連れてこられた少女が裏世界にいざなわれ、行き来するという話です。内戦映画、ファンタジー映画は、それぞれ数多くあるでしょうが、双方濃密に描写した上で、融合させたところに新味を感じました。少女のみがファンタジー世界に落ちる構造は、小説「ふしぎの国のアリス」に近いですが、軸足をリアル世界に置いているところが異なります。ファンタジー世界をお花畑ではなく、虫や蛙、異形がうごめく陰鬱で泥臭く生臭い世界として描いていて、その過剰なビジュアルが面白いのですが、現実世界と絡み合ったときに、マジックリアリズムのような風合いとなるのもまた面白いです。展開は、ありがちの逆を行くことが多く驚かされるのですが、奇を衒ったようには感じられず、ごく自然な流れです。最後には複雑な余韻を残す、よく練られたシナリオだと思いました。今まで映画で見てきた鬼軍人の中でも結構レベル高いな、彼は。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 10点(2023-04-05 20:39:26) |
5.《ネタバレ》 幻想的 都会のアリス、ロストチルドレンを思いだす。 引き込まれる世界観 |
4.劇場に一人で観に行って完全にノックアウトされた作品でした。少女の前に突如現れたあの世界は、果たして"世にも奇妙な世界"だったのか・・・はたまた"現実逃避による幻覚"だったのか・・・。受け取り方によって批評も変わるだろうな。私にとってはハッピーエンドでした。 【movie海馬】さん [映画館(字幕)] 10点(2012-09-09 01:06:02) |
3.《ネタバレ》 現実の世界は恐ろしく空想の世界に逃げるしかない。スペイン内戦時の悲惨さを子供の視点心境から見事に映している。 【akila】さん [DVD(字幕)] 10点(2011-09-11 15:59:30) |
2.《ネタバレ》 最後、迷路の道が開いたとき、奇跡が起きるかと思ったのですけど、やはり空想は空想だった。でも素晴らしい作品でした。10点!! 【トント】さん [DVD(字幕)] 10点(2008-09-08 16:23:56) (良:2票) |
1.《ネタバレ》 少女が主人公の冒険ファンタジーと戦争レジスタンスのコラボレーション。いったいぜんたい誰に観て貰いたいのか?マーケティングもへちまも関係ない孤高の姿勢。クールだ。観ていて悉く予想と期待を裏切り続ける展開は、次はどうなるの?と久々にドキドキワクワク。極悪非道の大尉さんにかすかな人のぬくもりを残しつつ、バサッと切り捨てる。クールだ。2つの大きく異なるジャンルを見事に組み合わせ、建設的対峙の中で新しい物を生み出す。これが弁証法的発展ってやつなんだろうな。それにしても、まんまと騙されて子供と鑑賞する親の身にもなって欲しいものだ。子供に悪夢を見せてやろう、トラウマを植え付けてやろう、という悪意すら感じるが、あまりにクールに騙されたので許す。 【正義と微笑】さん [DVD(吹替)] 10点(2008-03-29 02:21:44) |