3. 二度目の鑑賞になるが、回を重ねて観る度に楽しい発見がある。
仙台藩の伊達騒動といえば、何度も映像化されている山本周五郎の『樅の木は残った』が一般には思い浮かぶに違いない。だが、リアリズムに徹して幕藩体制の非道さや武家社会における「お家」の大事さを描いた『樅の木』とは異なり、本作においては伊達騒動の顛末はむしろサシミのツマというべきであり、仙台藩に送り込まれた冠者ながら、愚鈍で朴訥な赤西蠣太という親密感溢れるキャラクターを通して、型通りに秩序化された武家社会における人情や恋愛の右往左往を見事なまでにポップでユーモラスに描いているのがミソである。
ギクシャクしたお家騒動の後に蠣太が迎えるハートフルなラストが心地良過ぎる。こんな素敵な時代劇を作れる伊丹万作にはもう少し長生きしてほしかったと組まれてならない。