1.サリーちゃんのパパとかパタリロみたいな人が出てきますよね、これ・・。これは凝った映画です。冒頭、サイレント映画のように始まり、全体としてはいわゆるグランド・ホテル形式。船上を照らす幻想的な青白い月の光、優雅で贅沢な船室、ボイラー室での見栄をはりあう一流オペラ歌手の歌合戦・・などなど、雑多で魅力的なイメージに溢れ、特にストーリーがない進行にも退屈しません。満月を背にした美少女のショットには見とれてしまいます。ややギャグっぽいけどヴェルディ「ナブッコ」のあの準イタリア国歌的合唱が響いたときは、そのハマリ具合にドキッとして、やられた~って感じでした。その後のなだれこむような収束もメリハリ利いてていい感じ。「運命の力」「アイーダ」「椿姫」とヴェルディのメドレーみたいな音楽に満足。オペラやオペラファンの権威的で貴族趣味的な醜さや陳腐さを皮肉りまくっても、やっぱり監督はヴェルディそしてオペラを愛してますね。ドビュッシーとかシューベルトとか「皇帝円舞曲」だとかも使われてて、傍からみれば鼻につくオペラファン、クラシックファンの自己満足も満たしてくれます。しかし、オペラが嫌いで、この映画を観ないのはもったいないと思います(私のいや~なレビューでこの作品を嫌わないでください)。たいしてマニアってわけじゃないけどオペラ好きな私なんかは冷静な目で見れないから、10点しかつけられないんですけど、本作にはフェリーニの厳しくも温かい人間観察の視線が感じられると思うんですが・・・。監督は、自分を権威に祭り上げる世の中を、そして権威となった自分自身を笑い、哀しく見つめているような気がします。