1.《ネタバレ》 人に勧められ、まず一話ずつのTV版?から鑑賞しました。
人として育てられなかった少女が唯一人として「愛」という感情をおぼろげなから感じる相手=ギルベルト少佐を求めるところから話は始まります。少女は少佐への想い以外は全く無機質で、両手の金属製の義手さながら、まるで人形のような受け答えしかできません。しかしドールという顧客の手紙代筆サービスを通して次第にその人格に中身が伴うようになり、熱を持ち、彼女はそれを自覚していきます。
一話ずつ、彼女が人になっていく過程は見ていて素直に面白かった。また、無機質であるがゆえのダイレクトに核心をついた彼女の物言いは、機械的ながら考えさせられるものが多かった。無機質なヴァイオレットも、人になっていくヴァイオレットも、どちらも魅力があり、彼女はいい人だと感じた。
ここまでがTV版の話。ギルベルト少佐はもうこの世にいないものと思ってTV版の鑑賞を終えましたが、劇場版でまさかの生存の可能性が。さんざんここまでその可能性を否定しておいて劇場版でそれって…ずるいなあと思いました。が、そんな小さなこだわりなど吹き飛んでしまった。死後に送る手紙、技術の進化に伴う電話の普及、それでもなくなりはしない「手紙」という文化。声が伝わること、文字で想いが伝わること、どちらの方が優れてるかは分かりませんが、人と人をつなぐ手段・技術の魅力の一端を見た気がしました。
一話ずつヴァイオレットが変化していく過程は見ていて楽しかった。そんな彼女の幸せを願うようになったのは自然な流れだと思う。そして彼女が願い続けてその想いが叶えられ、こちらも幸せだった。おめでとう。素直にそう思えました。命令を聞くこととギルベルト少佐のことしか頭になかった彼女が、会おうと思えば最愛の人に会えるにも関わらず、「指切りの約束」を果たそうと島から去ろうとするシーンは、悲しいような暖かいような、複雑な思いでした。しかし間違いなく、不快なものではなく、何処か清々しいものだったことは確かでした。
人に勧められる前はあまりに綺麗すぎるその少女の絵に抵抗があり見ることを遠ざけていましたが、見て良かったです。瞳の緑、傘の水色、リボンの赤、葡萄の紫、さらにスミレの紫、色彩をとても大事にする、最高の一作でした。