12.完璧だと思いました。「息を飲む」とはこういう作品のためにある言葉なのではないでしょうか。鬼気迫る美しさでした。見終わったあと、しばらく胸がざわついて、ぽかんとしてしまいました。 【藤堂直己】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-02-12 03:51:22) |
11.“滅びて初めて事物は完成される”という仏教観念がある。滅び消え去れば全てのものは浄化され、完璧な美を得る。それは金閣寺の焼失を描いた「炎上」でも描かれたことだ。私は「滅び」というものが持つ、冷徹ながらも公平な力が好きだ。対象の持つその莫大な量のログを残しつつも全てを浄化し、表面上において一律の等価に帰してしまうその美しい暴力。その力に掛かってしまえば、善であろうと悪であろうと何であろうと全ての貴賤は失われ、純化した観念だけが残る。滅んでしまったものは文句なく圧倒的に美しい。この作品で描かれるのは、つわものですらない浅はかで卑小な者たちの“妄執の夢の跡”。愚かしい人間の業の絵巻。私が見たあの“ことの一部始終”は、蜘蛛巣城跡に今も潜む妖婆が悪戯に見せた幻かも知れない。本質的に業を抱えた者だけが見ることを許される白昼夢。私が見たのは、あの土地に残された莫大な量の妄執のログなのだ。兎にも角にも廃墟写真集なんぞを見てうっとりしているような不気味な人間である私にはたまらない作品。 【ひのと】さん 10点(2004-06-21 14:26:29) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 日本版「マクベス」は大成功ですね。本家の物語は、11世紀スコットランドに実在した”名君”マクベスがモデルになってますが、それを五百数十年後に悪者に仕立ててしまったシェークスピアの罪は別にして、すぐれた人間心理の描写があり、物語としては非常によくできたものだと思います。本作もそのプロットを踏襲し、時代を戦国時代に設定したことは、武将の功名心と潜在的な下克上への嫌悪感とを描くことに大きく貢献しています。また、シェークスピアの洞窟の魔女よりもなじみ深い”化生の物”が棲む森というのも、後の展開への大きな伏線となっております。モノクロであるが故に、映像の迫力が伝わるともいえるでしょう。これは岡本喜八監督の「日本のいちばん長い日」(1967)でも言えることで、あえてモノクロを選ぶことで血生臭い迫力がより強調されるのだと思います。”謡い”を挿入することで、より日本的な伝奇性を醸し出すことにも成功し、先の展開がわかっていながら(「マクベス」の読者ならきっとそうでしょう)引き込まれる展開にワクワクすることでしょう。私は、浅茅の方が武時に大殿を殺せとそそのかすシーンのあと、事後に三船敏郎がどのような戻り方をするかに興味がありましたし、浅茅の方が手を洗い続けるシーンがいつ出てくるのか待ち遠しかったです。また、森がどのように動くのだろうとも期待して観ておりました。そしてクライマックスの”矢だるま”の演出! 狂気に狩られた非道の君主の最期としては、これほどふさわしい結末もありますまい。後の「影武者」や「乱」にも本作のエッセンスは見受けられますが、すでにこのような完成度の高いものができてしまったあとは、物足りない印象はぬぐえません。お見事! <以下蛇足>音声が聞き取りにくいという方は、ぜひDVDでご覧ください。日本語音声に日本語字幕というのは違和感を感じるかもしれませんが、台詞をそのまま文字に起こしているのでなじめます。 【オオカミ】さん 10点(2004-04-24 10:09:49) (良:1票) |
9.一言で云えばすごい映画でしょうか。俳優の演技がすごければシーン一つ一つの迫力もまたすごい。全ての映像が鬼気迫る迫力で迫り、また怪しげな光を放っています。 【亜流派 十五郎】さん 10点(2003-07-23 17:14:01) |
8.シェイクスピア戯曲で最も日本人にぴったりくるのは「マクベス」だろう。戦国乱世の下克上そのままがドラマ化されているからだ。黒沢としてもこの作品を選んで大いに正解だった。年代はかなり離れてはいるが「リア王」によった「乱」がいささか歯切れの悪いものになったのとは対照的だ。「七人の侍」も傑作だが、「蜘蛛の巣城」の方が簡潔でまとまりがよい点、一日の長があるように思う。奥方役の山田五十鈴は三船の女房としてはちょっと老けた感じだが、その見事な演技は圧倒的だ。マクベス・ドラマは夫人が巧くなければ確かに話しにならないのだ。ヴェルディのオペラ「マクベス」でも夫人役は超絶技巧のアリアをこなさなければならない。三船はやっぱりなんらかの髭面が一番似合う。武将としての強さと人間としての弱さを見事に演じてくれた。10点。 |
7.黒澤の最高傑作ではないのかもしれないけれども、三船の最高傑作とはいえるんじゃないかな。あのオーバーアクトが作品世界にピタッとハマってた。 【じゅんのすけ】さん 10点(2003-06-17 19:45:42) |
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6.ネタバレあり。【月麻呂】さんのご指摘通り、全編が凄い映画。観出したら止まらない!のカッパエビセン。何度、そのドツボにはまったか。もののけ老婆のシーン、相方が幽霊になってやって来るシーン、山田五十鈴が闇に消え行くシーン。落ちない血糊を洗うシーン。そしてラストシーン。三船は自分そのものだ。自分の弱さや醜さを突きつけられるから、この映画は怖いのである。嗚呼!今夜も「もののけ」に誘われ、観てしまいそうだ。 【すぎさ】さん 10点(2003-06-16 23:42:17) (良:1票) |
5.すばらしいの一言です。黒沢監督は人間のエゴを常にうまくとっていると思います。三船敏郎の演技も圧巻でした。 【coco】さん 10点(2003-03-27 03:00:52) |
4.何回も見てるけどいつ見ても引き込まれる。能面作りの山田五十鈴の凄みがこわ~い。三船がだんだん狂気になっていくのもこわ~い。ファーストシーンとラストシーンがつながって人間の欲望の空しさ、はかなさが浮き彫りになる巧みなつくり。三船が矢ぶすまにさらされるシーンなんぞ、一体どうやって撮ったのか不思議でしかたない。CGなんてなしだからねぇ・・まぁ全てにおいてすごいとしか言いようがない。惜しむらくはこの時代全ての日本映画に共通するけど、録音技術が悪いのかセリフが聞き取りにくい。いっそ字幕をつけて欲しい。 【キリコ】さん 10点(2003-03-01 00:15:00) |
3.最後の奥方の発狂とそれに続く蜘蛛の出の森がうめくように動き出す場面。最後は畳み掛けるように矢面にさらされる鷲津。これまでもたくさんの名画を外国日本を問わず鑑賞してきましたが、これ以上の映画にであったことはありません。すばらしいの一言です。 【ヨーロピアン】さん 10点(2003-02-01 20:50:38) |
2.黒澤明、渾身の一撃!ですね。かのシェイクスピア氏もさぞやお喜びでしょう。 【愚物】さん 10点(2002-11-06 01:50:41) |
1.化け物がほんとに不気味。下手な怪談映画よりよっぽど怖い。あと最後の矢のシーン、これはもう圧巻。どうやって撮ったんだろ。黒沢明という人の凄さが凝縮されとる作品ですな。 【たけぞう】さん 10点(2002-10-04 01:17:56) |