1.《ネタバレ》 《まことに申し訳ないが、以下、クライマックスシーン完全ネタバレにつき、未見の方はご遠慮ください。》
勝新太郎が演じただけでも座頭市シリーズはTVも含めて数多くあるが、その頂点に君臨するのがこの第1作である。座頭市の凄腕はろうそくや天井に投げつけられた一文銭のエピソードなどによって既に存分に観ることが出来るが、やはり、素晴らしいとしか言い様がないのは、平手造酒を演ずる天知茂である。池で釣りをしながらの市との会話のとぼけた味わいや、胸を患い寺で臥せっているところに、市が出入りに助っ人に行ったと聞かされるやいなやガバッと跳ね起き、小僧が必死に止めるのも聞かず、押っ取り刀で駆けつけるその姿は、それだけでも涙なくしては、観れない! そして、小さな橋の上で市との対決。市は造酒を斬りたくないのに、造酒はそれを許さない(この時の彼の台詞がまた泣けるんよ!)。勝負はもちろん一瞬にして決する。市の背中に覆われて、斬られた造酒の姿は画面からは見えないが、ここで、「勝新、日本一!」と観客席から思わず掛け声が飛ぶ位の一世一代の名演によって、死に行く平手神酒の(決して見えない!)満足げな表情と心の友をこの手で斬った座頭市の深い深い悲しみが、描かれる。嗚呼