1.本作に出会うまで高橋克典は只の兼業俳優だという目でしか見ていなかった。しかし、本作での彼には金子正次が乗り移っているようだ。決して外見は似ていないのだが、ギラギラした目の奥に映画主演に命を賭けた金子の魂が宿っているのだ。作品は、金子が伝説の映画『竜二』を完成させるまでの紆余曲折を描いたもので、リメイク作品ではない。そして、細野辰興監督は、伝記ものとしてではなく、フィクションとして金子の人生を再構築しており、映画製作というものが人生を切り売りしていく、いや自分の生き様をぶつけるものであることを二重性をもって訴えかけてくる。松田優作をモデルとした羽黒役の高杉亘のそっくりぶりも含め、命を賭けた映画製作においては、金子が乗り移った高橋の名演のような奇跡が起きる。これだから映画はやめられない。金子が起こした奇跡である『竜二』も素晴らしいが、俺は『竜二Forever』の方が好きだ。