1.《ネタバレ》 率直にいうと面白くありません。何が不満かと聞かれたら、名シーンが1つもないことだと私は答えます。観終えたあとに1つ1つのシーンが脳裏に浮かんでこないのです。この物語の舞台は、床屋の店の中か法廷がメインになっています。低予算も結構ですが映画としてこれほど画にならない舞台設定も他にありません。わざわざ映像化する意味がどこにあるのでしょうか?あげくのはてに、けだるい夫婦仲や不倫、お金が絡んでの脅迫、そして殺人と続く。まるでTV番組でよくある○○殺人事件と同レベルでした。かりに監督の名を伏せて、サスペンス劇場としてこれがテレビで放映されていたら、誰も有名監督の作品だとは気づかないでしょう。それほどありきたりな物語なのです。ブラックジョークが笑えるよ、と言いたい気持ちだけど、この程度でいちいち笑っていたら胃を壊してしまう。コーエンから暴力描写を除外したら萎んで凡作になってしまった。そんな感じが否めません。そもそもなにゆえにバーバーなのか?タイトルのみが個性的で思わせぶりですが、主人公の職業が床屋である必然性はまるでありません。しかも床屋のくせに、くわえタバコをしてまわりに煙をもくもく充満させながら、お客様である子供の髪の毛を切る。ありえない。もしあれがかっこよさをみせるための演出ならば、バーバというよりもバーカと言ってやりたい。冗談じゃありませんよ。この兄弟は日常の中の非日常の世界観をいつもつくりだしてきた。いわば彼らの作り出す非日常の画はファンタジーに近いものがあった。それがこの作品にはまったく感じられない。モノクロだとかカラーだとかを議論する以前に、元の映像が兄弟のものとは思えないほど凡庸でした。期待していただけにがっかりです。