2.《ネタバレ》 今年の大ヒット作品という事で鑑賞しました。期待などは全くしていませんでしたが、それでもこれは酷い……。
個人的に映画が始まって三十分は良かった部分もあったと思うのです。例えば桐谷健太は画面に出るだけで面白い演技を見せてくれますし、佐藤隆太の熱血教師っ振りも板に付いていたと感じました。それにニコ学の野球部員にとって甲子園出場を一つの「夢」として明示しておいて、じゃあその夢が達成されたとき「夢の先」は存在するのか?という事を何度も作品のテーマとして問いかけるのは良かったと思います。
作品が崩壊するのはその後です。この映画で主要な部分は地区予選の決勝戦なのですが、まず相手チームの描き方が余りにもずさん過ぎます。普通のスポーツ物は相手チームにも試合に負けられない理由や意地みたいなものが示されて、その試合展開に観客が白熱出来るという流れがお約束ですが、本作では相手チームのアイデンティティはエースのピッチャーのみ、監督が三カットくらい映りますが他のナインはロクに映されません。そのエースのキャラ付けも「ちょこっとムカつく奴」程度で非常に淡泊。これで試合に白熱出来るわけがありません。あと試合中にしょっちゅうタイムを取っては監督やチームの一人がナインに喝を入れて「じゃららら~」というメインテーマが流れる展開が繰り返されるのには辟易しました。アホかと。その間相手チームは完全に無視されて、画面にも映らない。これではまるでゲームでコンピュータ相手に戦っているようなものです。感動できるわけがない。最後は何とか逆転して試合に勝って終わりですが、その際も相手チームは全く映りません。ここで相手のエースが悔しがっているカットを入れるだけでもドラマとして成立すると思うのですが……。総括すると只のカッコいい俳優たちの感動ごっこを鑑賞する映画といった感じでした。
最後に許せなかった点を一つだけ。「夢の先に何があるのか?」と云う事が本作品のテーマだと前述しましたが、終盤に市原隼人がこう言いやがります。『やっぱり夢の先には何もねーよ!』と。それテーマに対する答えじゃねえから!