1.《ネタバレ》 1962年に始まったシリーズも、1971年製作の本作で中締め(草刈正雄が主演した2作は除く)。10年後にもう一作「帰ってきた若大将」が制作されたようだけど、実質的なシリーズ最終作にしてはなんとも適当な作り方。はっきり言うけど、ここまでのシリーズ17作で最低でした。主人公が誰か分らないくらいにストーリーが散漫。いつもの若大将の家族に代わり、青大将の親父や乳母が何度も出てきて、青大将が主人公のスピンオフでも観ている錯覚さえ覚える。青大将が酒井和歌子や吉沢京子にアタックを続け、それがテーマと思えるほどしつこい。でも内容はセクハラのオンパレードでコメディだとしても不快が残る。当の若大将にはこれといった見せ場もなく、逆に若大将のニックネームを後輩に譲ったりする。主演をその後輩に変えてシリーズを続けようとでも思ったのだろうか。常連の若大将の家族が一人も出演しないところを見ると、急遽シリーズを締める事情があったのかも知れないが(あるいは前作で打ち止めだったとか)、こんなもので終わって欲しくなかった。とても残念。■軽くシリーズを総括すると、「若大将」というキャラクターがその後の加山雄三のイメージを不動のものにしたのは良く分る。というか、たぶん彼はあまり演じていない。あの屈託の無さや鷹揚な態度は素のキャラクターだろう。それはいわゆる「天然」のスター性で、長嶋茂雄さんと同類ですね。「若大将」シリーズも青春映画の部類に入ると思うけど、若さゆえの苦悩を問いかけるよう深刻な色彩は無く、憧れを覚えるスタイルをベルトコンベアで流し続けた印象です。スポーツ万能で歌と楽器に精通して女性にモテる。同時期の日活の青春映画などとは好対照です。予定調和な娯楽作品として気楽な時間が過ごせる楽しいシリーズだったと思います。もうひとつ、主人公の祖母役の飯田蝶子さんが好きでした。何があっても孫の味方という態度を崩さない役作りがとても温かで微笑ましかったです。