9.決して高くはない期待を大きく下回る想定外に“滑稽”な映画だった。
原作は未読だが、人気作家の話題作の映画であるから、映画自体のの善し悪しの前に物語自体の面白さはある程度堪能出来るのだろうと思っていた。
しかし、残念ながら紡ぎ出されるストーリー自体があまりに下らなかった。
突飛な設定をまかり通す物語の説得力と整合性は皆無で、堤真一、中井貴一ら日本を代表する俳優たちの“真面目”な演技が妙に滑稽に映ってしまう程だった。
これが原作通りならば、これほど了見の狭い稚拙な小説がなぜ売れるのだろうと疑問が膨れ上がるところだったが、どうやら例によって、大いに原作の伝える世界観を無視した映画になってしまっているようだ。
そもそも面白い小説の映画化はハードルが高いものなのに、その世界観をただ踏襲することも出来ず、好き勝手に無駄な要素を付け加えて、“別物”に作り替えてしまうことに対する美意識の無さが、いつものことながら理解出来ない。
どうやら映画を観ていて感じた「大阪」という舞台設定におけるあらゆる稚拙さが、原作小説には無い要素であり、逆に舞台となった土地への造詣が深い作者ならではの濃い世界観が原作では繰り広げられているらしい。
原作自体は前々から気になっていたので、読んでみたいとも思うが、この映画を観た後では当面読む気にはなれない。
ただし、憎悪さえ生まれてもおかしくない駄作ぶりにも関わらず、どうしても憎めない自分がいる。
その唯一の要因は、綾瀬はるか嬢の“たわわ”な小走りシーンが、冒頭とクライマックスの二度に渡って映し出されるからに他ならない……。