1.《ネタバレ》 囚人には貴重なご馳走、おせちの一品を賭けた戦い。
如何に聞き手の食欲をソソるか?が本作の醍醐味なハズ。だから聞く人に味が伝わりやすいメニューで勝負するハズ。南の海鮮BBQのように、聞き手に伝わらない残念話を交えつつ、“もう一人の囚人”である私が鑑賞後“そうそう、あれ美味しいよな、よしこれから食べるか!”と思わせなきゃいけないんだけど、それが何故か、母ちゃん、息子、飲み屋の女、元カノと、食べ物あるあるより、ホロリと来る人情話ばかりを入れてきた。
原作はいわゆる“飯テロ漫画”だったけど…オムライスにカレーを掛けるまではアリとして、奥にカルボナーラとなると未知の味になる。何よりガチッと厚い卵に覆われた、粘土みたいなオムライスはシズル感がまるで無い。普通のお母さんが作るようなオムライスのビジュアルで良いのに。
土鍋ごはんに産みたて卵(あのオレンジの黄身は美しかった)に醤油だけで充分なのに、バターに焼いたとうもろこし…余計なもの混ぜ過ぎ、入れ過ぎだ。そしてこの元ホストの食べ方が汚い。食べ物を含んだ口の中見るの苦手。でもこれは役者さんの演技のせいではなく、『勢いよく食いながら全身で悲しめ』とか、監督なりの要求であんな事になったんだろう。
原作では大体ひと晩で淡々とバトルが行われたのを、何日も跨ぐモンだから、飯話の合間にオナラとかウンコとか食欲減退シーンを挟んでくる。アレ面白いと思ったんだろうか?
チャンコが手紙を食うのも意味が解らない、ってか怖い。それで栗原が独房に入るけど、後ろ手に縛られて食事を犬食いさせられるとか、暴れた栗原が顔ボコボコになるまで暴行受けたりとか…日本の刑務所であんなこと実際あるの?田中要次が人情刑務官っぽく出てくるけど、あの暴行で全部ブチ壊し。
栗原がしおりにした仕打ち(しおりの家に女連れ込むとか)も許せるものじゃなかった。そもそも社会で悪さをした囚人たちが、今まで一番美味かったものの話をする時、つい滲み出る人間臭さがこの物語の魅力だと思っているから、栗原の出所後(お勤めを果たしたあと)がどうであろうと…
俳優さんは皆さん頑張ってるし、牛のアニメ?は工夫の跡が見えたけど、地方の古民家でロケするお金がないからセット。時期的に海岸で撮影できないからセット。人気漫画が原作のグルメ映画だから、時間もお金もケチったって、そこそこお客は入るだろう的な内容。もっと丁寧に作っていれば『極道めし2』も創れただろうに、もったいない。