3.《ネタバレ》 「この実験は明らかにおかしい」「条件が偏り過ぎている」「監督側は意図的に身体を壊す為、無茶をしているとしか思えない」等々、書きたい事は沢山あります。
でも、どうやら実験に対する批判というか、検証については既にやり尽くされた感があるようですね。
「一ヶ月マクドナルドのメニューだけを食べ続けても、必ず身体を壊す訳ではない」「むしろ健康になる事もある」「ダイエットだって出来る」という事が世界各地で実証されており、作中の実験結果に文句を付けるのは、遅きに失するように思えます。
なので以下は、なるべく純粋に映画としての評価を。
場面転換などで多少ぎこちなさを感じる部分もありますが、音楽やアニメーションを駆使して、観客を飽きさせないような作りとなっているのは嬉しいですね。
S、M、L、スーパーサイズのポテトの袋や、ジュースの紙コップを並べる事によって、視覚的に大きさを分からせる演出なども、テンポ良く行ってくれています。
作中で繰り返される主張は酷く歪んでいるように思えるのですが、一応「アメリカ人の健康に対する危機意識を高める為」という大義名分が掲げられている為、嫌悪感を和らげてくれるのもありがたい。
「ビッグマックを毎日食べているけど、全然太っていない」「運動をして鍛えているので平気」というタイプの人達を登場させているのも、一応の公平性を感じられました。
「病院にもマクドナルドがある」「大統領やキリストを知らない子供達も、ドナルドは知っている」「小学校で、生徒がコーラとスナック菓子の昼食を取っている」という場面が挟まれるのもショッキングであり、問題提起に成功しているかと。
エンディング曲も、何だかクセになる魅力があったと思います。
これらの点は、長所と呼べそうですね。
で、短所というか、気になる点なのですが……これは、ちょっと多過ぎて挙げ切れないです。
あえて一言で表すなら「悪趣味」な作りである事でしょうか。
わざわざ吐瀉物を映し出すという視覚的な悪趣味なんかは、まだまだ可愛い範疇。
ちゃんと医者から「脂質の摂り過ぎには注意してね」と言われて、笑顔で握手した上で始めたはずなのに、全然注意していなかったり「摂取カロリーを減らして」と助言を受けているのに、それでも減らさなかったりしたのには、流石に呆れましたね。
ここの場面は「マクドナルドのメニューは脂質が多い」「カロリーが高い」という印象を与える為には外せなかったのでしょうが「医者の忠告に反して意図的に暴飲暴食している主人公が卑怯なだけ」としか思えませんでした。
食品業界側の言い分を提示する際にも、その直前に「彼らは圧力団体」「非難の矛先を他の物に向けようと努力する」というナレーションを行い、たっぷりと偏見を植え付けた上で弁明する人を映し出しているのだから、やり切れない。
極め付けはラストの演出で「スーパーサイズは、もう止めにしないか?」→「サンダンス映画祭での上映から六週間後、マクドナルドはスーパーサイズの中止を発表」→「マクドナルドでは、この映画との関連は無いとしている」って流れには(うへぇ)と声が出そうになりました。
観客に「映画の影響でスーパーサイズが販売中止になったんだ。この監督は凄い!」と思わせたいのでしょうけど、あからさま過ぎてゲンナリです。
ただでさえ胡散臭くて偏向的な内容だったのに、これでトドメを刺されちゃった気分。
ここで「現在、スーパーサイズの販売は中止されている」くらいのテロップ表示で済ませてくれていたら、もう少し本作に対する信頼度も回復出来ていたかも知れません。
ちなみに、本作の主演と監督を務めているモーガン・スパーロック氏は「デスバーガー」というスラッシャー映画にもカメオ出演しているのですが、本当にチョイ役といった感じで、印象に残りませんでしたね。
そちらの映画を先に観賞済みの自分でも、全く憶えていない役柄でした。
こういった品を作った人だからこそ、マクドナルドを連想させるスラッシャー映画にカメオ出演させたのでしょうし、それなら作中で無残に殺されてしまう役の方がオイシかったんじゃないかなぁ、と思います。
いっそ犯人役にしても良かったかも知れませんね。