1.《ネタバレ》 自分は音楽をやってきたせいかバンド映画にはめっぽう弱い。「BECK」はもちろん「スウィングガールズ」、「リンダリンダ」でさえウルウルしてしまうほどだ。そこへきて大御所クイーン、前評判も高い。これは映画館で号泣してしまったら恥ずかしいなと思っていたのだがその心配は杞憂に終わった。学生時代の仲間とバンド結成後クイーンはとんとん拍子に売れていく(まあ、フレディのあのヴォーカルと楽曲なら当然なのだが)そしてメンバーとの不仲、事務所や音楽関係者とのトラブル、ゲイのカミングアウト、愛する女性との別れなどのエピソードが描かれるのだが「それってまあ普通にあることだよね」レベルである。それだったら同じモンスターバンドのAC/DCの方がよっぽど波乱万丈だ。出っ歯ならずも158㎝の小柄なリードギターのアンガス・ヤング、カリスマヴォーカルボン・スコットの急死、ドラマーの脱退、メンバーでもある実兄の死、もっと濃密なエピソードがあふれている。映画としてはなぜ自分に必要で信頼する女性と別れてまでも同性を選んだのかそのあたりの掘り下げが不足している。結局、良かったのは最後の演奏のシーンだけ。立ち上がって手拍子したい衝動にかられたがぐっと抑えた。やはりクイーンの音楽は素晴らしい。その偉大な存在を再認識することはできた。まあ、クイーンを知らしめたという点ではいい映画である。が、今度は「本物」の映像を見たいと思う。