1.《ネタバレ》 最初にはっきりさせたいのは、この映画の主人公たちの行動は「武士道」じゃありません。極めて現代的な、当時の主持ちの武士にはあり得なかった「正義感」に基づく行動です。赤穂浪士達が賞賛されたのは、別に「正義」の彼らが「悪」の吉良を倒したからではなくて、亡き主人に対して忠義をつくしたから。それ以上でもそれ以下でもありません。当時の武士道から考えれば、この映画の主人公達は主君(将軍)の意に背き、勝手に江戸を離れ、主君の肉親を殺し、(ここからは推測ですが)先祖代々受け継がれてきた家を潰してしまった、主君にも不忠、先祖には不孝、まったく旗本、御家人として問題外な存在なわけで。ただし、それが悪いというわけじゃない、ただ、そう言った大きな壁を乗り越える重さが全く感じられず、「悪い奴がいると上司に聞いたから斬りに行きます、ホイホイ」という軽さがたまらなく違和感があった。。その癖、既婚女性の眉を剃って見せたり、どうでもいいとこだけリアルなのもおかしな映画。
ただ、そうは言ってもほんの一瞬だけワクワクした瞬間もあった。宿場町に仕掛けた罠に敵を追い込み、どんどん追い込んで行くシーン。特に一軒だけ残された家に爆薬が仕掛けられてるあたり、かなり楽しんで意外と名作かもと思った。
けれども、それだけにわざわざその有利な状況を捨てての、暴れん坊将軍×13みたいな全くリアリティのない斬りあいはひたすら退屈で危うく居眠りをするところだった。
あと、そもそもこのストーリーのもともとの作り方が想像がついてすごく嫌ですね。
おそらく、行列の前に飛び出てきた子供を無礼打ちにして尾張藩領を通れなくなったとか、その子供の父親の漁師に鉄砲で撃ち殺されただとか、二つとも事実と全く反する俗説を聞きかじっただけで、膨らませて映画にしちゃう適当な創作態度。あの主人公の兄弟で大名家の養子になった人って何人も何人もいるわけで。それがみんなあの調子で威張ったらw そして何よりも絶対このストーリーが成り立たないのは、あの当時の尾張藩主が彼の同母兄であるという事実。全く同じ立場で、家格がはるか上の相手にあの態度をはずがない。
民間伝承をもとに、裏の歴史的なストーリーを作るのは否定しないし、それなりの成功例もあると思う。ただ、もう少し、ほんの少しでも真実味がある話じゃないと。聞いた瞬間、嘘だとわかる話は嘘としての価値もない。