6.《ネタバレ》 見終わった時の素直な感想は、「どこまでも男に都合のいい話だなあ」である。
日本人の泣かせのツボを押さえきった浅田次郎(ホメているつもりではない)の原作ということは知っているが、こんなに男に都合のいい話なワケか、本当に。
それにしても大沢たかお。日本映画界は大沢に期待しすぎているように思う。いくらなんでも父親になった佐吉役は、他の老練で重厚な俳優にまかせるべきでしょう。ありえない、あの老けメイク。
で、冒頭からありえない老けメイクでDVという無茶な設定のせいで台無しになっているため、その後のほとんどの部分は「駄」の字を念頭に見ることに。
30年代、戦後闇市、共に、美術面ではトホホ状態だ。これでは、コントの書き割りと大して変わらないではないか。そんなに金が無かったのか。金をかけられないなら、ないなりに、時代設定を損なわない工夫はできなかったのか。トホホ。
演技…とにかく大沢が浮いている。舞台と間違えているような大仰さ。常盤も、持ち前の雰囲気を壊してまでアバズレになりきれていない。出番が少ないせいか、役柄を理解していないように感じる。
最悪だったのは岡本綾で、単なる湿っぽくてうっとうしい女で終わってしまった。生気が無い。生気が無いので、自らを抹殺するという行動に出てもそれほど意外性が感じられない。
この話はファンタジーなわけだけども、最初に言ったように、「ファンタジー」が「男に都合のいい方にだけ働く」のである。どういうことやねん。
別の男のタネによる長男が死んで、二号さんの子供が産まれなくなって、または近親相姦だった不倫相手がもともと存在しなかったことになって、佐吉親子は何か損をしただろうか。悲しかっただって?それどころか女たちは決定的なダメージを受けているというのに?
あああああ、もうやんなっちゃうけど、男にだけ都合のいいファンタジーを公共の場でセンチメンタルに語るのはやめてもらいたい。とっくの昔に日本の女子はそれに同情するほどウブではなくなったのじゃ。