1.大泉洋は最初の電話から声を荒げ、有薗芳記の死に逆上し、と激情型の傾向をことあるごとに示す。軽妙・寡黙型が真相に対してついに取り乱してこそクライマックスのエモーションが際立つのであって、ヒステリー型が、一本調子で泣き叫んだところで観る側は鼻白むばかりだ。
しかも、喜怒哀楽の心理をそのまま顔面に貼り付けすぎとくる。
映画自体も様々な無駄が多い。
雪原の中から登場する男、という開幕で引きこませるかわりに、その倒叙は中盤でのサスペンスを減殺してしまう。
開巻の思わせぶりなカットバックを始めとするスローモーションは単なる時間の引き延ばしに終わり、腕時計は伏線としても何らドラマと関連づかず、単にとってつけた印象だけを残す。
大泉が衝動的にススキノの街路を走る横移動は、中途半端に反復されるのでショットの強さとして突出してこない。
最も致命的なのは、松田龍平のボケに対する大泉のツッコミ台詞がことごとく映画を安いバラエティ番組の感覚に引き戻してしまうことだ。