5.《ネタバレ》 30万人の決死の脱出作戦。
でもいまいち心に迫るものがないのは、脱出に失敗して沈没したりして命を落とした人たちの描写がライト過ぎるから。
上空からとらえた、海上で転覆しつつある船の様子とか、すでに転覆した船の上で座り込んでる兵士とか、そういうライトな描写で”沈没被害”を描くことが多すぎるのだ。
実際に魚雷が当たって転覆していく様子も描かれたが、いまいち兵士たちの悲惨さが描き足りない。
空爆されてボーンって兵士が飛ばされでも、兵士の腕や足がバラバラになって飛んでくることはないし。
イギリスの民間船に乗ってたあの17歳の少年の頭からの出血も、オランダの船の中に潜んでいた兵士たちが船の外から銃撃された時の出血も、ほんのわずか。
会場で放り出されて船からもれた重油にまみれて、そこに戦闘機が墜落して体に火がついてタイヘンだぁ~っていう場面の迫力もいまいち。
顔が燃えてケロイドになって蕩けていくみたいなCGを使うこともないので、火の向こう側で「うわ~」って顔してる姿しか見えないから、リアリティがない。
それじゃぁ代わりに、登場人物に深みがあって、感情移入できるかといえば、それもない。
イギリス人の民間船を出したオジちゃんも、ずっと桟橋に立ちっぱなしのケネスおじさんも、存在感勝負ってかんじ。
思い出せるのは、2つだけ。
上空からとらえた広大な海。太陽の光で美しく光る海。
そして、蛾みたいな模様のイギリスの戦闘機。
ノーランにしては珍しく、ノンヒット・ノーランの作品。