1.《ネタバレ》 私は中国の司法制度に詳しくないのでこの映画がどこまでリアルなのかはわかりませんが、とりあえず中国をバカにして作ってることはわかりました。拘置所という国家の施設で、将軍の娘殺害容疑がかかっているアメリカ人が襲われる(ギアを殺すことが目的なのに凶器を持って来ず、回し蹴りで殺そうとする世界一間抜けな殺し屋)、殺人容疑者と弁護士が打ち合わせをする場所が弁護士の自宅、中国の法廷なのに英語で熱弁を振るう弁護士等々、どう考えてもおかしなことが目白押しです。異国の理不尽な法廷に突如放り込まれたらという面白くなりそうなネタを扱っているにも関わらず、細かい部分があまりに杜撰で都合よく作られているため、中国を下に見た適当な映画にしかなっていません。中国人にとっては気分の良くない題材なのですから、せめて細部にまでこだわってウソは極力入れないという製作側の良心は必要だったと思います。法廷ものとしても、容疑者とその弁護士が何度も命を狙われるという大変なことが起こっているのにそれが裁判に影響を与えない、検察側の主張が一切描かれない、ラストは状況証拠とその場で飛躍していく推理のみで片がついてしまうという、かなり強引なものとなっています。論理を戦わせるという裁判ものの醍醐味をすっかり放棄してしまっているのが残念なところです。また、ドラマ部分も的を射ておらず、最悪の国選弁護人しか付かないと言われたこの裁判の弁護を、なぜ有能なバイ・リンが引き受けたのかというそもそもの部分がまずスッキリしないし、彼女がキャリアを捨ててまでこの事件に挑む理由づけも不十分です。一度は米大使館に逃れたギアが、バイ・リンのために再び中国の土を踏む心変わりも唐突。追い込まれた現場で突然心情の吐露をはじめるハリウッドお決まりの臭い展開には笑うしかありません。結果、リチャード・ギアのブリーフしか印象に残らない作品となりました。