1.《ネタバレ》 この演出にする為にこの話を選んだのか、この話だからこの演出にしたのか。
どちらにしても役者の台詞が全編歌になっているという映画としては希有な演出方法にバッティングさせないという意味では本作ぐらいの話が調度良かったのではないかと思います。
発想としては特徴的ですが造りとしては余り丁寧さを感じる事が出来ませんでした。
冒頭のタイトルバックの俯瞰の映像でカメラの存在を感じさせる雨垂れを見て「初っ端から結構雑だなぁ」と思ってしまいましたし、シークエンスが変わる場面々々でも編集のタイミングが抜群に悪い所があるので全編歌っているミュージカルなのにテンポの悪いものになってしまっています。(後半になると幾分改善されてきます)
作中で歌われている曲も主役の2人が駅で別れるシーンのものが良かったぐらいで、その他の曲は殆ど印象には残りませんでした。
勿論私がフランス語を殆ど分からないという理由も有りますが(サルとサバぐらい…)、メロディーというより台詞に対して音程を不自然に上下させているだけではないかという所が多々あったと思います。
また、映像ではセットや衣装の色に拘っていたと思うのですが、それらを強調させたいが為にべったりとした正面からの工夫のない光の当て方になっていたので、奥行きの感じられない教育テレビの人形劇の様な安っぽい画になってしまい色見だけが無駄に散らかっていた印象でしたし、壁紙と衣装をシンクロさせても、そのアイデア以上の効果を感じる事は私には出来ませんでした。
ラストのガソリンスタンドでの雪と建物の白と夜空の黒に差し色の様に原色をポイントで配した画は唯一非常に美しかったです。
最終的な印象としては、音楽と映像による演出を軸にした作品だと思うのですが、それが活かされているシーンがあまり無く実験的な試みとして終わってしまっていて演出というレベルにまで具現化されてはいない様に思いました。