1.手持ちカメラなど、多少ドキュメントタッチも取り入れ、過剰な演出を極力抑えリアリティを打ち出す手法は共感出来る。しかし、この作品に僕が全くリアリティを感じず、感情移入出来なかったのはなぜか。
ひとつは、台詞ひとつひとつに重みを持たせようとしすぎて、ただただわざとらしく感じてしまったこと。美しさを強調する台詞がやたらと多すぎる。
もうひとつは、深いテーマを扱っているにもかかわらず、本当に心が苦しくなるようなシーンは麻薬中毒で苦しむ場面だけ、他のシーンは何だかんだ汚い部分を見せていないし、予定調和な展開が多すぎたように感じる。
映像や音楽は美しいし、デルトロを始めキャストの演技は素晴らしい。
しかしこの映画の主題でもある「悲しみ」からの再生が、ほぼ全編美しくしか表現されていないために、何だか薄っぺらさを感じてしまった。