1.《ネタバレ》 この作品の最大の欠点は、
ハッピーの感情がまるで
上手く描かれていない点にあると思う。
死を目前に控えた西田敏行さんを
傍に常にいるハッピーが
どう思っているかが、
観客の最大のカタルシスに
つながる筈なのに、
ハッピーの気持ちが常に
ただそこにいるだけ
としか描かれていないため何も感じられない。
悪く言えば、ただ西田敏行さんに
連れ回されている犬としか
見えてこない。
動物映画の難しさはわかる。
どんなに調教された犬でも、
集中力は短いし、
感情を持っているかのような
芝居というのはなかなかできない。
でも、ハッピーの感情がわからないのは、
監督の無精としか残念ながら言いようがない。
そう見えるように努力した様が
まるで見えてこない。
たとえば、泣かせの一回目である
西田敏行さんがハッピーと
別れようとした時の鎖に繋がれた
ハッピーが西田敏行さんの元に
向かおうとする姿は、カットを割り過ぎで、
監督の「こうすればこう思っているように見えるでしょ?」という
掌が見えた気がして馬鹿にされてる気がした。
さらに、西田敏行さんが死を目前にしているシーンで
ハッピーが西田敏行さんの手をなめる。
わかりにくい!
心配の表現にすら見えない。
さすがに鈍感すぎるだろう。
死を目前にしていることくらい
本能的に気づけよ!
馬鹿犬に見えてしまっているぞ!
なめるより、低く唸るような寂しそうな
鳴き声にするとかして欲しい。
説明的にならないようにしているのかもしれないが、
相手は犬なのだから、もっともっと
わかりやすく表現しないと
抽象的過ぎてよくわからん!
終盤はもはや誰目線?
この世を去ったハッピーの回想?
そこだけ説明的!
終始ハッピーの感情がわからない故に、
この手の作品に重要な
別れの予感による重圧的な悲しみ、
緊張感が一切ない。
そしてその大打撃に加え、
玉山鉄二と川島海荷も感情がわけわからない。
西田敏行さんの死を目前にしながら、
最愛のハッピーと共に死に場所を探す、
その芝居が豊かなだけに、
二人の行動の動機が弱いので、
勝手にやってろ、な気分を終始
抱かされた。
この監督は台本に沿って人物、
ハッピーを動かしているだけで、
そこに感情の豊かさが微塵もない。
この監督は人間にも動物にも興味がない
ことだけがぼくには伝わった。