1.《ネタバレ》 無門がほぼ全編サイコ野郎なので見ていてイライラするばかり。
育った環境のせいでサイコ野郎になりました、里全体がサイコ集団です、っていう背景があるのは判ります。そして、そこから脱却して人間性を獲得するのが主題なのも判ります。でも、それが流れとなって具体的なカタチのドラマになっているのは平兵衛であり、大膳であり、無門はラストでお国を亡くす時点までずっとサイコ野郎ですから、主人公は果たして無門だったと言えるのかどうかも疑問な状態。延々と感情移入を拒むアンチヒーローとして描かれた無門、それでいいのかなぁ?って。
お国もまたドラマにはなっていないんですよね。かつて無門に拉致された、けれどキツい性格という設定描写から先へとは殆ど進まないまま最期を迎える状態で、ドラマの無い者同士で最後に悲劇を演じられたところで感動できません。
金が全てに優先され、人間としての感情が欠如した存在、それを現代の人間に象徴するのはいいとして、その醜い姿をわざわざ現代人にオーバーラップさせるあたりは一体何様のつもりなのよ?って感じで。送り手側が高みに身を置いて世間を見下しているつもりになってる作品って嫌い。本当は別にそんなに偉くはないでしょ? 人のこたぁ言えない生き方しかしてないでしょ?
アクションシーンでの笑えるというよりはバカバカしい長回しや、突然のカメラ目線のウケ狙いなどは真面目にやる気があるのかないのか。お笑い人殺し合戦っぷりがテーマとの齟齬をきたしています。
救いは平兵衛を演じた鈴木亮平と大膳を演じた伊勢谷友介。脚本的には言動に不安定さがあるものの(登場人物全員そうなのですが)、その熱さ、力に満ちた感じが魅力的でした。対して主役のクセにサイコな大野くんは損な役回りというか。っていうか彼のキャラがこの役に合っていたのかどうか。サイコながらも抗えない魅力を醸すとか、そういうのは全く無かったですからねぇ。
痛快時代劇かと思いきや、ひたすらストレスを抱き続ける作品でした。