3.《ネタバレ》 ドラマ(特に第1シリーズ)が素晴らしかっただけに、Dr.コトーという映像作品のフィナーレとしては「完全に晩節を汚したなあ…」というのが偽らざる感想。
とりあえずドラマチックにすりゃあいいだろうという感じで暗い要素(コトーに憧れるかつての純真な少年の挫折、島民の高齢化、破綻直前の離島医療の現状、唐突なコトーの重病)を安易に詰め込み、それらの問題を真摯に描くことも無く、最終的には「スーパードクター」コトー先生の超人的な活躍で幕を引く。
結局「島の医療をコトーの身を削った自己犠牲が支えている。いつまでもそれで済ませていいのか?」という、新規キャラまで投入して問題提起した根本的なテーマに、この作品は真正面から答えていない。たしかに簡単に答えの描ける問題ではないでしょうが、それならそんなもんを最初から引っ張り出すなと。
白血病で昏倒寸前の医師がほぼ一人で多数の島民の手当て、手術までやり遂げ、その代償として命を失う。そして島民はそれを貴重な教訓にして医療体制の改革を受け入れる…バッドエンドですが、個人的にはそういう終わり方の方がまだ誠実にテーマに向き合っていたような気がします。
けれどこの映画はそこからも逃げて、「コトーが力尽きたような姿」と、「現実か夢想かもわからない、コトーを含めた島の人々の幸せなその後の日々」の両方を描き、なんとなくのハッピーエンドに見せて大上段に振りかぶった問題には蓋をするという、非常にずるい決着を選びました。
結局、島の医療問題もコトーの病気も彩佳の妊娠も、映画をドラマチックに見せかけるための「道具」でしかなかったのでしょう。
観終わった瞬間、録画を削除して、「金を払って映画館で見ないで本当に良かった…」と変なお得感を感じたのが唯一の収穫でした。