12.《ネタバレ》 暴漢に襲われて妻を殺された主人公が、その出来事のために10分間しか記憶を維持できず、すぐに忘れてしまう記憶障害にかかる。
この記憶障害にかかった男が、妻の復讐のために手掛かりをすべてメモに残し、少しずつ増えて行くメモを見ながら犯人にたどり着き、復讐を果たす。
こうした発想をそのまま映画にしたら、結構面白い作品に仕上がっていたろう。記憶障害の男をわざとミスリードして利用する人々の狡猾。嘲笑。保身。次第に混乱してゆく記憶障害の主人公。その過程を通じて現れる、記憶そのものの不確実性など、傑作と呼べるものになる要素は多分にあったはず。
ところがこの映画では、そういった深い人間ドラマはほとんどない。その一番の原因が、この映画の見せ方。
この映画では、復讐を果たしたところから話が始まる。少しづつ過去にさかのぼりながら話を見せて行く。ということは結果が分かっているんだから犯人探しの面白さがない。なぜそんなことをするんだろう?という疑問がいつまでも続く。しかも細切れに過去にさかのぼるから、煩雑この上ない。結局最後になって記憶が書き換えられていたというオチで話が終わる。
人間ドラマほとんどなし。ただ話の筋を追うだけで精いっぱいの映画。
映画に出てくるのはしょうもない主人公の裸と何回も繰り返される過去。
そんな筋を追うだけのくどくどしい話に何時間もつきあったのかよ、と腹立たしい気持ちにさえなる。