4.《ネタバレ》 「スター・ウォーズ」(1977)直後に東宝が製作した宇宙映画である。基本的には荒唐無稽スペースファンタジーだがまともな科学知識も出ており、敵の出身地だった球状星団メシエ13(M13)というのは実在の天体である。ほか金星の大気データも結構真面目に調べたようで、これはこの時期にソビエト連邦のヴェネラ計画による金星探査が進んでいたことに関係あるのかも知れない。金星の地表を映像化しようとした映画は珍しいのではないか(地形は出鱈目だろうが)。
しかし10年以上前のクラシックな乗り物を引っ張り出して来た上に、それなりに精悍だったフォルムを芋のような形状に改変する感覚は全く理解できない。要は戦艦大和が宇宙を飛ぶなら海底軍艦を飛ばしてやれということだろうが、特撮技術の面ではまるきり60年代のままのようで、初めからスター・ウォーズと同次元で張り合う気もなくコテコテの東宝特撮映画のまま押し通そうとした感じである。宇宙戦艦の発進場面などアニメの迫力にも劣るのはさすがに呆れた。
またストーリーに関しては、全体としては「宇宙大戦争」(1959)のような印象(池部良氏も出ている)だが捻りもなく、三角関係なども絡めているがお笑い草である。死亡予告が出ていた人物が予定通り死んだ場面では、あまりに予定通りすぎて(本人の顔も幸せそうで)笑ってしまった。また終盤でもあからさまに死を予感させる顔の人物がいたが、そのことに観客側はみな気づいているのに一人だけ知らないでいるヒロインが屈託ない笑顔を見せたのはよかった。ここはこの女優が可愛く見えた(当時まだ17歳くらい?)。
ラストはまた衝撃的な展開で、火山が爆発するのは東宝特撮のお家芸としても、最後の大爆発は正直意味がわからず、そこに直接タイトルが被さったのを見て制作側の精神が崩壊したのかと一瞬思った。しかしその後冷静に考えると、これは最終兵器(波動砲レベル)を使った結果がこうだったということのようで、当方が気づくのが遅いということかも知れないが、それにしても出来事の因果関係が素直につながらず、緊張感も持続できていないと感じるのは映画の作り方の問題ではないか。
そのほか編集か何かに不可解な点もあり、素人が言うのも何だがやっつけ仕事に見える気もする。これなら「さよならジュピター」(1984)の方がまだましだと断言しておく。