10.《ネタバレ》 “KING KONG”と大文字になりました。
'76年版は現代劇として制作されていましたが、本作は'33年版オリジナルを、時代そのままに踏襲しています。
この辺りからでしょうか、ハリウッドが送り出す大作映画が、美麗なCGがウリなだけのリメイク作品やシリーズものばっかりになってきて、個人的にちょっと、食傷気味になってきたんですよ…。本作もそんなイメージで、美麗なCG以外のウリが、'76年版と違ってオリジナルのリメイク…くらいなんですよね。
でもけっこう高評価の作品のようですので、そういう意見もあるんだぁ~程度に読み流してください。
33年当時のニューヨークの街の再現度。オリジナルキャストの名前を出すお遊び。不気味な巨大昆虫。静まり返った公園の池で滑って遊ぶコングとアンなど、良かったシーンは結構あります。…ほとんどCGしか褒めてませんが。
エンパイヤステートビルの創り込みは、'33年版のビルの再現度の高さを再認識させてくれました。
ジュラシック・パークで見慣れたCG恐竜ですが、キングコングの恐竜はどこかヌメヌメした印象で、制作チームが違うと表現方法も変わるんだなって、勉強になりました。そしてオリジナルでは割愛されたらしい、巨大昆虫が気持ち悪いです。とても気持ち悪いです。次々襲われる船員。あんな島で、あんな虫に殺されるのは勘弁してほしいですね。
オリジナルと違い、アンとコングが相思相愛となっていて、この辺'76年版の影響かなぁ?'76年版を見慣れた私には、こちらの方がしっくりします。でも言い方を変えると、恐竜や昆虫以外、あまり代わり映えのない内容だなぁ…って思ってしまいました。
アンを握ったままジャングルを疾走するコングに、アンが潰れたり頚椎損傷しないか心配になりました。当時USJのアトラクションでも作ろうしたんでしょうか?そんなスピード感演出でしたね。(※アトラクションあったみたいです)
プロントサウルスがゴロゴロと坂を転げ落ちるシーンは、まるでAIが造った、動く肉の塊の映像みたいです。そもそも、あのシーンの必要性が判りません。ラプトルみたいな肉食恐竜も一緒に走ってますが、別に踏まれる危険を犯して並走しなくても、一番足の遅いプロントサウルスを捕食すれば良いだけでは?って、冷めた目で観てしまいました。こちらもアトラクション化を意識しての演出かな?
一番の欠点は、上映時間が長いんですよ。オリジナルが100分のキングコングに188分も掛けるのは、時間管理と映像の取捨選択が下手だからだと思います。
例えば船の衝突の場面。見張りのジミーが前方に壁を見つけて叫ぶ。で船長が壁を目視して機関停止を命じるまで、何と20秒も掛かってます。長すぎです。壁を見つけてから座礁するまで4分近く使ってます。時間取りすぎです。キングコングを観に来たお客さんは、貨物船の座礁なんて、別にじっくり観たい訳じゃないんです。きっと他の監督なら30秒で終わらせたでしょう。
キングコングの前で起死回生のパントマイムするアンは予想外の動きで可愛いんですが、序盤の舞台で踊る映像は酷いもので、放り投げた帽子のキャッチは観客の背中や別カット割りで誤魔化す。アンが倒れ込むアクションすら別カット。何か「役者が頑張ってないなぁ」って印象を持ちました。
ジミー少年と育ての親ヘイズにも時間を割いていますが、2人で本の解釈を語り合う場面って必要?どんな裏設定でも構わないけど、2人のシーンは全カットしても全く問題なかったですね。
コングの最後を見たデナムの「美女が野獣を死なせたんだ」のセリフ。これオリジナルではコングの片想いだったから、意味があったと思うんですよ。相思相愛にしちゃった本作では、やっぱり飛行機がとどめを刺したって事になると思います。デナムは知らないけど、本作のアンは体張ってコング守ろうとしたし。
良いシーンもあったし、CGはお金掛かって綺麗。本作の出来に腹は立ちませんが、もう50分短ければ、もう1点追加しても良かったです。
個人的な見解ですが、ピーター・ジャクソンって何故か大御所感がありますが、ブレインデッドのカルト的高評価で、実力以上の仕事を任されてしまった感が拭えません。彼をメジャーに押し上げたロード・オブ・ザ・リングって、あれだけメジャーな原作で、上映時間と制作時間、制作費と宣伝費を掛けたら、誰が創っても、アレくらいはゴージャスになるような気がします。そんな流れで、メジャーなオリジナルがあって、同じように時間と費用を掛けた本作。その後はまたロード・オブ・シリーズの尻尾のホビット…身の丈にあった上映時間と制作費の、オリジナル作品を観てみたいものです。