3.まあ、ドキュメンタリーと見紛う危うい映画。綿密に取材を重ねて丁寧に作られた作品であることはよく分かる。一般乗客にとっては、あまりにも不条理な死。でも、これが「記録映画」的に「真実」として大勢の人間の印象に残ることは、ある意味危険かも。製作者たちは誰も現場を見ていない。これが「まんま」あの時起きたことかどうかは分からない。事実をアメリカ側に有利に歪曲していない可能性もゼロじゃない。といって、私はこの映画を根本的に否定する気にもなれないのだが、これを見せられても、正直なところ、緊張感と虚無感だけが伝わってきて、それ以外に感じるものがほとんどなかったのも事実。勇敢に戦った市民たちがいたのだ、という記録のため? 特典映像に各遺族を追ったものが入っていたが、遺族にとっては慰めにもなっていたようだから、それだけでも意義はあったのだろうか。こういう生々しい大事件を後から映像化(TVドラマも含め)する意義って、一体何なのだろう、といつも思う。記録映像ならば分かるが、商業ベースに乗せる意味が、やっぱり分からない。悲劇に群がるハイエナ、と言っては言い過ぎなんだろうし、自分も見ているわけだから同類であることも自覚しているが、何かこう、引っ掛かる。いっそ「事実をもとにしたフィクションだ」と明言してくれれば、見る方もすんなり見られるのだが・・・。この作品に対する感想というより、ほとんど愚痴になってしまった。