1.《ネタバレ》 原作は川口松太郎。
昨日、父親と話していて偶然知ったことだが、あの探検家“かわぐちひろし”の父親らしい。
いけ~いけ~♪かわぐちひろし~♪いけ~いけ~♪
のテーマ曲で有名な、あの川口浩である。
それと、この映画の一個前に、自宅で『現代やくざ 血桜三兄弟』という作品を観たのだが、この作品の中で、ヤクザのボス役として河津清三郎という役者さんが出ていた。
なんと、その河津清三郎が、この『愛怨峡』の中で準主演を演じているではないか。
途中で気付いたのだが、まったくの偶然に感動さえおぼえた。
『愛怨峡』ではまだ若い河津清三郎だったが、『現代やくざ 血桜三兄弟』の方では、貫禄ある堂の入ったヤクザのボス役を演じている。
こういう偶然って、皆さん経験ありませんか??
さて、“幻の作品”と呼ばれるだけあって、劣化はかなりひどい。
だけど、十分に理解できるだけの状態で複製されていたので、特別問題はなし。
話の筋としてはかなり単純で、その後の溝口作品群と比べると、やや物足りなさを感じたが、後半はやっぱり後年の溝口を彷彿とさせる盛り上がりで、尻上がりに楽しめた作品だった。
金持ちのぼっちゃんと別れた主人公の女性は、東京で知り合った少々ヤクザな感じだが情に厚い男性と懇意になる。
しかし、二人の関係は決して深いものではなく、漫才のコンビを組んだり、飲んだりする程度の仲である。
男の方も、「その気なし」という感じで女と接しており、女の方もその男を「男として」見る感じではない。
そんな中、一度自分を捨てた金持ちのぼっちゃんからお呼びがかかり、子供のためを思って女は田舎に戻ることになる。
しかしながら、女はいつの間にか東京で知り合ったヤクザな男を好きなっていた。
そして結局、女は再度田舎を出て、東京のヤクザな男の処に戻るのであった。
つまり、友達同士という体裁で仲良くしていただけのつもりが、いつの間にか「情」から「愛」が生まれ、女はそれに気付き、その男と一緒になったという次第なのである。
アッサリとした終り方ではあるが、妙に感銘を受けてしまった。