2.《ネタバレ》 ジョン・ウーによる「三国志」の完全映画化。
トニー・レオン、金城武というアジアきっての世界的映画スターのそろい踏みは、エンターテイメント作品としてやはり魅力的である。
ただ、ここ数年のジョン・ウー作品にはあまり“当たり”がない。
実のところ、「フェイス/オフ」を越える作品は生まれていないのではないかという感はある。
もはやハリウッドでも幅を利かせる大アクション映画監督というポジションに与えられる潤沢の資金が、総じて作品の「大味感」につながっているように思う。
そこにきて何十億という制作費を投じての大エンターテイメント作品として誕生したらしい今作。
しかも、半年後に公開されるPART2との二部作。
「大味感」に対する不安は捨てきれない。
で、どういう映画だったかというと、
ものすごく贅沢に作られた「歴史ドキュメンタリードラマ」という感じ。
冒頭のドキュメンタリー番組の1コーナーのような歴史的背景の説明モノローグから始まり、主要キャラクターが登場する度に表示される役名の字幕。
「三国志」自体に明るくない者にとっては、「~の将軍」などという説明は分かりやすくはあるが、当然ながら映画としての質を落とすモノだったことは間違いない。
詰まるところ、全編通じて、三国志の中の「赤壁の戦い」の始終をただなぞっていくような印象が抜けず、各人物についてのドラマ性が薄く、のめり込むような感情が生まれない。
俳優たちの表情や一つ一つのシーンには雰囲気があり、それぞれを切り取ったなら質の高さを感じる。
しかし、一つの映画作品としては決して面白味のある映画とは言い難い。
そもそも「三国志」という物語そのものにある程度の造詣があったなら、もう少し印象が違うのかもしれないが。