5.《ネタバレ》 「純粋に」映画として観ると言うことが可能なのか、観終わった後一日考えたが、結局無理だと感じた。終盤のオチはやたら長い宴会シーンのあたりから見えてくるのだが、これはかなり残虐な話であり、実際にこのようなことが無かったのならば、やっぱり映画にされるのは嫌だ。たぶん他の国の人も自分の国がこのように描かれたら、同じように感じるのではないか。
確かに「天皇陛下万歳」を叫びながら、中国人をチャンコロと呼びながら国土を蹂躙した日本兵に対して、中国人が良い印象を抱くはずは無く、反日映画ができるのは当たり前だ。しかし、この映画に関して僕が問題だと思うのは、この映画について、「純粋に」映画としての面白さが存在する作品だと言う内容のレビューが非常に多いことだ。確かにそれが可能な人もいるかもしれない。しかし、この作品を観た後に、日本人に対して悪感情を持たない人(政治的に中立な、例えば外国人)はまず存在しないだろう。現代の日本人はそうは見えなくても、この映画で描かれるような特異な獣性や不気味さを心のどこかに隠した国民だと思うのは間違いないだろう。個人的には映画の出来を「純粋に」評価する以前に、この作品は政治的にヤバい作品だと思うのである。
映画の観客が皆歴史に詳しいとは限らない。例えば、レビュワーの中にも国民政府軍と八路軍の違いが分かっていない人もいる。そんな人がこの映画を観ることは危険だし、veryautumnさんが書いているように、「この映画は入門には向かない」のである。そして、誰がこの映画を観るかはコントロールできない。歴史を題材として扱う場合は、あくまでもそれがフィクションであること(当たり前のことなのだが)を強調してもし過ぎることは無い。特にこのようにリアリティ溢れる映画ならば尚更だ。