2.《ネタバレ》 予算をかけた迫力のある特撮場面が売り物だった「ゴジラ・シリーズ」が「低予算・子供向けもの」に堕してしまった作品。
特撮部分は、壊れる建物などない怪獣島でのプロレスごっこに終始し、しかも多くが過去の作品のフィルムの使い回しという体たらく。最大の期待であった新怪獣ガバラの造詣に美しさは微塵も感じられない。愛嬌あるミニラが救いだが、人間と会話できてしまのはいかがなものかと思う。しかも大きくなったり、小さくなったりする。子供の夢の中という設定に甘えている。映画作りに対する自尊心、特撮魂、ゴジラ愛等は微塵も感じられない。
人間劇では、いじめられっ子が、夢でみた怪獣ランドのミニラに勇気づけられていじめっ子に立ち向かうという話に、間抜けな銀行強盗による子供誘拐未遂事件をこじつける。この強盗犯は首尾よく五千万円強奪に成功したにも関わらず、何をもたついているのだろうか?タクシーかバスか電車等を利用して、さっさと逃走すればよいではないか。予定では、どう逃走する段取りだったのか。敢えて車を盗む危険を負う必要は無いはずである。いじめっ子達との軋轢も、ガキ大将にぶつかっていってすぐ勝利、あっさり解決だ。ペンキ屋へのいたずらは、いたずらできる程元気になった、子供らしさを取り戻したという意味だろう。
このように全体を見渡して、観るべきものは無いといってよい。おかっぱのヒロインにも魅力がなかったと言い添えておこう。
唯一心証に残ったのは「怪獣マーチ」だ。「魔神バンダー」と同じ、佐々木梨里が力唱する。昭和の泥臭さが妙味になっている。映画にはないが三番の歌詞は「怪獣サマが泣いたとさ どうして地球は住みにくい ゴー、ゴー、ゴジラもおどろいた ミ、ミ、ミニラもブールブル ドッスン、ガッタン、ドッスン、ガッタン みんなこわしてしまうけど メガトン、スモッグ、排気ガス これが本当の怪獣だ」となっており、当時の子供の生活を脅かしていた排気ガス、工場排煙等の公害を批判している。「公害」「いじめ」「鍵っ子」「銀行強盗」という当時の社会問題を怪獣映画の中に盛りこもうとした意欲は買うが、無謀に帰した感がある。