3.《ネタバレ》 「忠臣蔵の話というよりは、父娘の絆を描いた話だったのか」
「父娘の絆を描いた話じゃなくて、曽根崎心中のような悲恋譚だったのか」
と二度に亘って驚かされた本作品。
期待していた内容とは違っていた、という失望もあってか、どうしても満足感が得られず終いだったのですが……
それを差し引いても、細かい部分が気になってしまう映画でしたね。
例えば中盤のシーンにて「昭和三十三年」なんて書かれている墓石が、思いっきり画面に映っていて、それも主人公の立ち位置より前に鎮座していたりするものだから、これはもう完全に興醒め。
この映画の作り手全員がそこに気付かなかったとも思えないし、ちゃんと慎重に撮れば回避出来る類のミスでしょうから、何というか「作り手に誠意が欠けているのではないか」なんて疑念が生じてしまい、映画そのものに対して不信感を抱く形となってしまったのです。
普通の忠臣蔵映画であればクライマックスとなる「吉良邸討ち入り」の場面を序盤に持ってくる構成は良かったのですが、結局あそこが一番面白かったのでは……と思えてしまう辺りも残念。
その代わりに用意されている山場が「可音の嫁入り」というのは、如何にも寂しかったです。
「死んだら、あきまへん」と言われたのに切腹するラストに関しても、忠義だの美学だのよりも主人公の身勝手さを感じてしまったのだから、自分とは相性の悪い映画だったのでしょうね。
主演である役所広司の貫録、ただ画面に映っているだけで漂ってくるような哀愁は、流石と思わせるものがあっただけに、共感出来なかった事が勿体無く感じられた一品でした。