1.《ネタバレ》 デビュー後は3作連続で興行成績が1億ドルを突破し、90年代末には確かにハリウッドの頂点にいたものの、『ブラックホーク・ダウン』の企画をリドリー・スコットに譲って以降は急速にキャリアが低迷し、ここ10年ほどは「あの人は今」状態だったサイモン・ウェスト。プライベートで抱えた借金によって首が回らなくなり、来る仕事は拒まず見境なくB級映画に出るようになったニコラス・ケイジ。この二人が『コン・エアー』以来のタッグを組んだ本作には、メジャーの世界を知る者による豪勢なB級映画を期待したのですが、残念ながらその出来は芳しいものではありませんでした。両者にとってこれは雇われ仕事のひとつに過ぎなかったようです。。。
ニコラス・ケイジはいつものあの表情。『ブレイクアウト』や『ハングリー・ラビット』など、ここんとこは同じような演技が続くので、そろそろ区別がつかなくなりそうです。ウェストによる演出には何のこだわりもなく、ただ撮ってるだけ。彼の手腕があれば、金塊強奪場面などはもっと面白くなったと思うのですが、そういった努力は微塵も感じませんでした。。。
脚本の出来も良くありません。気の良い犯罪者が、身内を人質に取られて不本意な仕事に手を染めざるをえなくなる。この手の映画としては定番中の定番のお話なのですが、類似作との差別化のための工夫を一切こらすことなく、定番を定番のまま出してきた本作の脚本家の根性には恐れ入りました。最初から最後まで予定調和の嵐、クライムサスペンスとしては失格です。おまけに、犯人の依頼通りに銀行を襲撃したにも関わらず、結局は殴り合いで決着をつけるというオチには唖然とさせられました(力づくで解決するのなら、最初から命令に従う必要などなかったのでは?)。さらには、キャラクター達の背景や行動原理の描写が不足しているために、ドラマの通りもよくありません。マリン・アッカーマン演じるライリーが主人公からの協力要請を二つ返事で了承したことや、FBI捜査官ダニーが主人公の罪を見逃してやった動機などがまったく分からないので、ドラマに感情移入しようがないのです。