1.《ネタバレ》 「実際に起きた「大阪二児餓死事件」を基に、家庭という密室の悲劇を描いた衝撃作」という前提を取り除いたら、後に残るのはさして中身のないただただ悲惨な事実を再現しただけの映画。自分の率直な感想を述べさせてもらうと、それ以上でもそれ以下でもありません。幼い子供がこの状況に置かれたら必ず母親を求めて泣き喚き、声を枯らせて助けを求めると思う。ゴミにまみれた小さな部屋の中でドアも窓も全てふさがれ、面倒を見てくれる大人も食べるものもない状況に置かれた子供は、きっと極限の不安感から悲鳴に近い声を上げ続けるはず。でも、この映画にそんなシーンは一切ありません。ただ淡々と静かに「お母さん、お母さん」と呼び続けるだけ。今の時代、3、4歳の子役にそこまでの演技をさせるとコンプライアンス的にまずいと言うことで恐らくそのようなシーンを撮らなかったのだろうけど、そういったシーンが撮れないのであればこの映画は作るべきではなかったし、実際に起きた事件を基にしたと謡うのであればやはり子供が泣き喚くシーンは絶対に入れなければならなかったと思う。これは社会を震撼させた衝撃的な事件をただ表面的になぞっているだけで、メッセージ性もテーマとしての深みも非常に浅いと自分は感じてしまった。実際にあった悲痛極まりない事件を基にしたという誰も正当な評価をしづらい前提を建前に、これは監督の自己顕示欲を満たすため、なおかつ幾ばくかの金儲けのために撮られた映画だと思う。邦画でよくある難病系のお涙頂戴映画よりも、とてもいらやしい下劣なものを感じ取ってしまった。正直、この監督の人間性は下劣だと思う。