9.《ネタバレ》 冒頭のオープニングクレジットのセンスのなさから、この映画ダメだなとすぐにわかってしまいます。
変な例えですが、人を見てお洒落かどうかを見るのは靴を見れば分かるといいますが、この映画でいえば、オープニングが靴にあたるわけで。
オープニングの出来の悪さが、ここまで素直に映画全体の印象に正直に反映されているのも珍しい。
何がセンスがないかといえば、登場人物の映し方。
正面からのアップ、カメラが徐々に近づいていってのズームイン・・・この監督は役者の表情だけで映画が撮れると勘違いしているのではないでしょうか。
人物に迫ったり、またアップで映すことでどのような効果を出すことが出来るのか、何故このアングルで撮るのかとか、まるで考えてもいないのでは。
ストーリーもまた何とも安っぽい感じで、FBIの捜査官が手に負えない捜査を学生に任せて解決に結び付けようとするストーリー設定もお前はコナンかよとか突っ込みたくなるし、最後クラリスが一人でビルの家に突入したりといった現実ではあり得ない展開もこれまた安っぽさ全開で、映画全体を見渡しても見どころはほぼ皆無と言いたい。
ただ、捜査官が囚人に逆質問され、クラリスの深い心の傷を少しずつ紐解いていくというパイオニア的プロットは多くの人に評価されているようですが、これもあくまで原作に因るものであって、決してこの監督の力量によるものではない。原作を凌駕するにはもうひとつ他の事で勝負してほしかったが、この監督のセンスのなさを見ると到底無理なんだろう。
例えば、予めペンを持たせると危険な目に遭うということを観る側の人間に植え付けておき、後半辺りでレクターのすぐ近くにペンが置かれている状況を4カットくらい見せているにもかかわらず、結局そのペンを使った恐怖は何も起こらずにレクターが搬送されてしまう。要するに、観ている側は肩透かしを食らった形になり、こういうところでも監督のセンスのなさが露呈されている。
何度も言いますが、原作と役者の演技だけの映画であり、このジョナサン・デミという人は映画監督としてのセンスがないと断言できてしまいます。
唯一、トイプードルが可愛かったというところだけが評価できるかなと。これなら「羊たちの沈没」といい勝負。