9.《ネタバレ》 場所の設定としては「岡山県真庭郡八つ墓村」とされている。1977年の前作では阿哲郡だったが、名前の上でのモデルと言われる「八束村」(やつかそん)が真庭郡だったことから、今作ではあえてこのようにしたのかも知れない。原作と前作では季節が夏だったが、今作は冬(から春?)の風景なのが特徴的で、景観面でも高所らしく冷涼で乾いた印象があった。現実の八束村(現・真庭市)にあるという蒜山高原の雰囲気でも出そうとしたのかと想像したが、実際のロケ地は全く違う場所だったらしい(屋敷と鍾乳洞以外は岡山県備前市の「八塔寺ふるさと村」が中心か)。
ストーリーとしては基本的に原作を踏襲しようとしていたようだが、前作では落としていた里村慎太郎を出し、これと美也子との関係を中心に据えたのが特徴である。今回の美也子は変に現代的すぎる気がするが、しかし結構いい具合に色気があり(嫌いでない)、美也子にしては意外に健気で純な思いをみせていた。
一方で、里村慎太郎と美也子をメインにしたこととの関連からか、かえって本来のヒロインである里村典子が登場する余地もできたらしく、これがこの映画の一つの売りとも取れる。何かと省略されがちな人物なので動向が注目されたが、最初から馬鹿を装っていただけのように見えながら馬鹿を装う理由が不明であり、終盤まで辰弥も単なる馬鹿だと思っていた節がある。最後に至ってやっとまともに話が通じる相手だということが明らかになっていたが、この間にどういう経過で相思相愛になったのかもわからない。年上の男女の関係が破綻した後に、若い世代の希望を示すものとして位置づけてはいたのだろうが、実際は極めて不徹底に終わっていた。
また春代さんも外見的には艶めかしい感じではあるが、個人的に好みの女優でないのと、辰弥への思いの表現が唐突で半端な存在になっていたのは残念なことである。
以上、全体的にさらりとした印象だが若干気の抜けた感じもあり、またこういうお話だとすれば、タタリとか双子婆とか洞窟(ただの地下室?)とか32人殺しとかいう濃い要素が出て来る必然性もない気がする。それがなければ映画にならないのかも知れないが。