3.《ネタバレ》 ダニー・ボイル監督らしいユニークであり、ファンタジックであり、独特な世界観は見事である。
また、全体的に子ども目線で上手く描かれているように思われる。
しかし、自分に宗教的な素養が足りないことも問題かもしれないが、物足りなさを覚える作品となっている。
教訓的な要素も、感動的な要素もあまり感じられなかった。
序盤こそ、面白みを感じていたが、中盤に差し掛かり失速していった気がする。
起承転結のうち、“転”が上手く描けていないのではないかと思われる。
お金の存在を知った父親と女性、犯人の登場、ユーロ騒動が上手く機能しているとは思えず、結論に対してスムーズにオチていないのではないか。
ユーロ騒動が描かれているが、彼らが欲を出しすぎて、時期を失して、ポンド紙幣が全て紙切れ同然となったというオチもなく、あまり意味をなさない(ユーロ騒動があったから大金が手に入ったわけだが)。
また、本作のテーマの一つである“母親が聖人になれたか”というオチに導くとすれば、ダミアンの起こした行動がもう少し周囲の人間を変えていくようなミラクルが欲しかったところだ。
ダミアンが正しい使い道を模索して、失敗を繰り返しながら、本当の使い道を探し出したり、周囲の者が大切なものに気づくという流れにもっていけなかっただろうか。
お金を燃やして終わり、井戸を掘り当てて終わりというオチは、キレいではあるが、どことなく疑問や中途半端さを感じた。