1.《ネタバレ》 何と吃驚。まさかの討ち入り場面カット!
「忠臣蔵」におけるクライマックスが、事の仔細を書状にて読み上げる形で、台詞のみで表現されてしまうのだから、唖然とさせられました。
後に色々と調べてみたところ
「溝口監督としては、忠臣蔵を撮るとしても、戦意高揚のプロパガンダ映画にはしたくないと考えており、血生臭い討ち入りの場面が存在しない『元禄忠臣蔵』を原作に選んだのではないか?」
なんて推測も浮かんできたのですが、真相や如何に。
いずれにしても、楽しみにしていた「溝口監督の描く吉良邸討ち入りの場面」を観られなかった事は、非常に残念でしたね。
映画としては、その代わりのようにクライマックスとして「十郎左と、おみの」のエピソードを用意しており、それに関しては、実に溝口監督らしい仕上がりとなっていた為、満足。
作中の台詞で「女の心」なんてワードが飛び出すだけでも(あぁ、溝口映画だなぁ……)と、奇妙な安堵感を味わえましたね。
いっその事、もっとこのエピソードを中心に据えて、オーソドックスではない、外伝的な忠臣蔵映画として纏めた方が良かったんじゃないかな、と思えたくらいです。
この映画を楽しむ上では
「忠臣蔵のストーリーを、殆ど知らない」
「討ち入りの場面が存在しない事を、予め知っている」
という、いずれかの状態である事が望ましいのでしょうが、自分はどちらにも当てはまらなかったようで、実に無念。
とはいえラストシーンにて、これから切腹を行う大石内蔵助の、満足気な笑みを湛えた姿を映し出して終わる形なのは、好みであり、嬉しかったですね。
悲劇的でありながらも、仇討ちを遣り遂げた達成感が窺えて、ハッピーエンドとも呼べそうな雰囲気。
期待していた内容とは違っていたけれど、その格調の高さゆえに「期待外れ」と評する事は憚られる……そんな映画でありました。