1.《ネタバレ》 視点によって評価が大きく変る作品でした。 あくまで総合的に判断すべきと言う人もいそうですが・・
血の繋がらない家族の、心の繋がりを見れば、そりゃあ良い映画でした。
しかし、子供に盗みを教え、子供の目の前で車の窓を叩き割って盗んではしゃいでる親父って、全然駄目でしょ。
リリフラが何歳の設定なのか不明ですが、働けない体ではない。万引きする時は集中力とエネルギーあるじゃん。
正当防衛とはいえ殺人死体遺棄の前科で、今まで苦労はしたのだろうけど、なにかしら稼ぐ方法はあるかと。
女房との営みを子供に見られたくない羞恥心と、他人の子供の虐待被害に敏感な心がありながら
万引きを教えるのには、何の罪悪感も負い目も無いって、どんなバランスでしょうか?
子供を愛するのは良い。でも子供は育てなくてはならない。常に親の背中は見られている。
一見、ささやかな幸せに満ちた偽の一家団欒。しかしバランスの悪い積み木は崩壊してしまう。
物理的に崩壊だけで済まず、親たちの過去が暴かれて、あの団欒は幻想だったのかと、子供の心にも疑念が広がる。
ホントに家族になれたつもりだった、浅はかな大人達に対し、冷めていく子供達。
その心のズレが、本来この映画の見所になると思うのだけど、そこを描く事はなく、淡々と終っていく映画。
いろいろな映画を観た世代には、この後こんなシーンが来るぞと予感があるのだが、スパッと次のシーンへ行く。
その風景描写のような撮り方が、フランス人に受けたのかなんなのか、フランス映画が苦手な自分には逆に不満だ。
実の親の家へ戻された女の子のつぶらな眼差しで終幕ってのも、わざとらし過ぎじゃないですか?
戦場カメラマンが、負傷した子供達を撮るというセオリーのような・・?
可哀想な子供への同情心で、盗人親父の父性本能への共感? いやいや、ないない。やはり無理。
保護されて施設へ行き、どこかスッキリした長男。家族が全てなのか、親は無くても子は育つのか。
考えさせられるテーマは確かに存在している。重いテーマだからこそそれを映画にする際のスタンスが問われると思う。
なぜ、このテーマを「万引き家族」という題名で世に出したのか、そこがセンセーショナルな分、逆に残念なところ。
でも、これが何の賞も取らずに、ひっそり公開されていれば、どうだったのでしょうか? もしくは題名が違ったら・・?
万引きをしなかったら・・? まあ、いろいろ納得の行かない映画でしたが、いろいろ考えさせられた映画でもある。
駄作ではないのは間違いない。でも絶賛の名作とも言い難い。否定に聞こえるかなあ・・正直「もったいない」って気持ち。
評価の高い人、低い人、そのどちらの意見にもナルホドと思いつつ、自分はこの点数にて逃亡を決め込もうと思いました。
この映画、カンヌでも「万引き家族」の名でエントリーだったのでしょうかねえ?
フランス人には、万引きに対する嫌悪感は薄いのかなあ? 自分はチケット買うとき、題名に正直抵抗ありました。
で、さすが賞の影響で、空いてる映画館、7割も埋まってました。 自分には「そして父になる」の方が良かったかな。