2.テーマもいい、演技もいい。
でも全く物足りなく感じるのがこの映画の特徴。
さして大きなドラマがあるわけでもないし、悲劇というわけでもない。
「人間の心の傷」という極めて深く抽象的なテーマを映画化するのにはもうちょっと脚本をどうにかするか、演出家の力量が問われることになるだろう。
アカデミー賞監督には失礼な話だが、他の人がとればもっと良かったような気がしてちょっと惜しい気がした。
どんなに頑張っても秘密がなくなるわけでもないし、傷が癒えるわけでもない、孤独になりたくてもどんなに絶望しても、人はどうしても誰か他人に寄り添って生きていくしかない。
人間は一人では生きてはいけない、そういう人間の複雑な感情、心の裏側を演出するってのは本当に難しいんだろうな。
告白後の若かりしのシルクと年老いたシルクの対比は良かった。
帰りの電車で目も合わせず微妙な距離を置いて帰った若い二人と言葉は無くても安心して寄り添って帰る車の二人。
相手の傷を理解し癒せるのは本当に心の傷を知っている人ではないと無理なんだろうか。