1.《ネタバレ》 キャスト的には、最高だった。やはり壱岐はあれくらいの年齢の俳優じゃないとリアリティがないし、特にそれまでどちらかというと受動的だったのが戦闘機の購入問題で目覚めていく姿が良かった。また友人役の丹波さんも渋いし、政府高官の大滝さんはこんな昔から年寄り役をやっているのにワロタ(何か、犬を選挙に出馬させそうで面白かった)、さらに女優陣、八千草さん、年の割には綺麗な人だとは思っていたがこんな綺麗だったとは想像できなかったし、秋吉久美子もこんなにあどけなく可愛かったとは!
ただ、脚本が……、原作にないあえて言わせてもらうと「改悪」部分、最低だった。
映画というメディアを使って、一つの主義主張を宣伝しようとすることを別に非難するつもりはない。
しかし、原作の登場人物の性格をゆがめてまで、自分の主義を映画の中で登場人物に語らせる、そのために原作のテーマまで変えてしまう。
あまりにも、原作者に対して失礼だと思うし、その原作だからということで映画を見た人間に対しても無作法極まりない。
そんなに自分の主義を映像で主張したかったら、どこかの政党の広報映画でも撮ってればよかったのに。
だいたい、ソ連によって11年間も不当に抑留された人物の娘が、社会主義勢力の運動に共鳴するだろうか?
この1点だけとっても、この映画がまともに人間を描くつもりが無かったことが分かる。
また頻繁に繰り返される領空侵犯=ソ連の脅威を描くことで、何故壱岐や川又が優秀な戦闘機を導入するために、あえて泥水まで飲むという原作の流れを、あの馬鹿な娘の台詞、あるいはしばしば挿入される無意味な映像でぶち切り、あたかも壱岐が戦争の反省を全くしない愚かな人間にまで貶めている。
そのくせソ連収容所での捕虜虐待はほんのお印程度。
よくこんな脚本を原作者が認めたものだと思う。
ただ、昔のサヨの情報操作を実感できたことと、その主張の出鱈目ぶりがよく理解できたのはかえってよかったのかもしれない。
何と言っても60年安保から半世紀、いまだに日本は戦争に巻き込まれていないんだから。