1.三國連太郎と八千草薫が共演する某CMで本作の映像が使われていて、そういえばまだこの三船敏郎の「宮本武蔵」三部作は見ていなかったなと思って一応見てみることに。稲垣浩監督が戦前に片岡千恵蔵主演で映画化したもののセルフリメイクで、稲垣監督にとってはこれが初のカラー映画となる。吉川英治の「宮本武蔵」映画化作品は内田吐夢監督の東映五部作と加藤泰監督の松竹版を既に見ているのでストーリー的には既に目新しいものはないのだが、東映版と松竹版が武蔵と又八の二人が関が原の合戦で敗残兵となったところから始まっているのに対し、この映画では二人が関が原に参加する以前から始まっているのが面白い。三船演じる武蔵はどんな感じだろうと思っていたが、野性味と豪快さはあるものの錦之助の武蔵と比べると何か物足りないし、何より泣く演技にかなりの違和感を感じた。それでも悪くはないのだが、やはり、三船には「七人の侍」の菊千代や「用心棒」、「椿三十郎」の三十郎などのほうが合ってる気がする。又八役が東映版で沢庵和尚を演じていた三國連太郎というのは面白いが、ちょっと濃すぎか。沢庵和尚を演じている役者も威厳や貫禄がなく、これでは加藤泰監督の松竹版でこの役を演じていた笠智衆のほうがまだ良かったと思える。全体的に見て思ったほどつまらなくはなかったが、これがアカデミー外国語映画賞を受賞した映画と聞くとちょっと疑問がわくのも事実。同時期に作られた時代劇ならば溝口健二監督の「近松物語」、「山椒大夫」のほうがよっぽど受賞してもおかしくない映画のような気がする。(もちろん黒澤明監督の「七人の侍」も。)まあ、続編となるあとの2本も一応見てみよう。