2.《ネタバレ》 延々と続く路上の移動風景が画面右からのワイプで切れたかと一瞬錯覚するが、
それは実は撮影スタジオ内で映写されているスクリーンプロセスの裏側からの
回り込みの映像であり、カメラはそのまま、撮影を終え祝福されながら
スタジオを出て行く女優の後ろ姿を捉える。
付き人を伴い、控え室へと戻る彼女をカメラは延々と追う。
控え室の中には部屋一杯の花束があり、そこにグレース・ケリーの
ロイヤルウェディングを伝えるラジオ音声が被る。
女優からの転身を出だしのワンショットで語るその簡潔さや
103分のコンパクトな上映時間は好ましいのだが、
その間ニコール・キッドマンの表情を
何度も「異常接近」レベルでクロースアップするカメラは相当にクドい。
シネスコで何ゆえにそこまで、何故その場面で、という寄り方を
クライマックスのスピーチに至るまで延々と繰り返していくので、
次第に印象が悪くなっていく。
ヒッチコック(ロジャー・アシュトン=グリフィス)との通話も、
わざわざ画面分割してみせたりと、結局は要領が悪いのではないか。
アナモルフィック・レンズによる画面の感触は良好で、衣装と調度品はよく映えている。