3.こじんまりとまとまった作品。箱根の寄木細工箱のようなSF。
日本公開版はカット部分が有るようだが、見ていて音響が飛んでいるのでたぶんすぐ気がつく。まあ全体としてさほどの影響は無いと思う。
チャッピーと呼ばれる無垢な人工知能の素体となるロボット警官は、恐ろしく良く出来たCGで、全く違和感がない。そのまま製品化出来そうだ。
全体として、身体や精神、博愛や人の矛盾に焦点を当てようとしているのだと思うが、何というか少し足りない。
きっと、アクション映画を志向した誰かと、メッセージ性を込めようとした誰かとの衝突が、違和感を生んでいる。
人工知能が人間を超えることによる何かや、人工知能が人間と関係する中で生まれる何かは、別に描かれない。
生き残るために時に創造主にすら反旗を翻し、しかし実際に行った行為には罪悪感を覚えるチャッピーは、ひどく人間らしい。
観る人が、哲学的な問いに向かうキッカケとなる娯楽アクションとしては良く出来ているのだろうが、どうにも小さくまとまりすぎている感がある。
地に生きる人達を描くから結果的に小さくなってしまったのではなく、予算なのか何なのか、何かの制約による箱庭感が拭えない。広がりや厚みが足りない。
ハリウッド作品らしくない、どうにもローカルな、こじんまりとした作品になっていると思う。
料理の仕方によってはもっと面白くなったんじゃないかなと思わせる、勿体無さの漂う作品。時間、かけられなかったのかなあ。
(1点、劇中でヴィンセント演じるヒュー・ジャックマンの演技は素晴らしい。あれ?違う人?と思うほど完璧に演じている。ロボット好きとヒュー・ジャックマン好きは、それだけで元が取れるかもしれない)