3.これは、父と娘の関係がうまく描けなかった作品の一例でしょう。というか、このいかにも中途半端な人間関係は、作品を盛り上げるのに大した貢献をしておらず、およそ余計なだけ。
離婚して他の男性と新しい生活に入ろうとしている元妻、そして娘。なーんだかお互いに気を使って、ぬるーい関係。それとは別に何やら暗い過去があるらしいのだけど、それにしてもヌル過ぎて、作品を通じヨリを戻していく過程ってのが、およそ無いに等しい。まあ、この主人公の筋肉男ロック様に、影のある役は似合わないから、この程度の踏み込みでよいのかも知れませんが。
しかしその新しい夫というヒトが、娘から嫌われるためだけに登場するのもよいとしても、あからさまに「アイツは私を見捨てて逃げた!」ってのも、どうなんでしょ。要するに、この娘は「父たるもの、私を助けて当然」だと、ここで宣言してしまう。あるいは、父のおかげでレスキューについて妙に詳しいらしく、ここにもヘンな父親礼賛の姿勢のレールが引かれてしまってる。この設定だって、もうちょっと「イザという時」に出し惜しみするなりしていれば、もう少し盛り上がったのでは、という気も・・・。
で、主人公はムキムキにも関わらず、基本的には肉体よりも乗り物を駆使して、家族の救出に向かう。中盤、他人のピストルを奪う場面もあったのに、それを後で使う訳でもなく、比較的すべてが順調。この大災害にどれだけ多くの人々が巻き込まれたか、という「人数のスペクタル感」を削ぎ落してまでも(これ自体、寂しいものはあるけど)、主人公の個人的な枠内に作品を限定して、そこに熱いなり冷たいなり狭いなり、あるいは怖いなり、個人に関わる描写をこれといって盛り込めなかったのは、これはさすがに、イタイでしょう。CGは確かに見事ですが、ちと虚しい。