5.《ネタバレ》 シナリオは歌舞伎「勧進帳」そのものだし、セットもロケも極めて少ない場面数で、第二次大戦の最末期に作られた作品だけに、予算も少なく、娯楽要素を大きくすることも出来なかったことが伺われる。
わずかに「強力」の役回りにコメディータッチを加えることが黒澤らしさとも言えなくはないが、そこに人気喜劇役者榎本健一を配しているところも、体制に気を使い、慰安として許されるような映画作りをしなければならなかったのではないかと思われる。
黒澤監督の歴史を語る上で見ておくべき作品だとは思うが、背景を一切考慮せずに作品として評価すると、当時の並みレベルのもの、今の時代では面白くない映画、というしかない。