1.《ネタバレ》 サラリーマンの夫のために「めし」をつくる主婦業に嫌気がさして、実家に帰って、数日間、ごろごろして、頭が冷やされてきたところに、夫が迎えに来て、元の鞘に収まるという、まあ、言ってしまえば、たわいもない日常話です。日本でテレビ放送が始まる1953年より前のことですから、その後テレビでやるようなホームドラマの需要を映画が担っていたんでしょうね。原作ありのホームドラマという時点で、監督の作家性が出にくいのだと思いますが、質素なサラリーマン夫婦を上原謙と原節子という必ずしも役に似つかわしくない映画スターに演じさせているところも、配役が先にありきの印象を持ってしまい、監督の作家性が今ひとつ見えて来ないところですね。ただ、作家性が表に出てこない分、時代の要求に忠実につくられているように感じられ、時代の記録として、貴重なものになっているような気がします。その反面、非常に古臭さばかりが目立って、時代を超えた何かが感じられないってことでもあるんですけどね。ここからは余談です。本作は大阪が舞台になっているのですが、この時代に、すでに、くいだおれ人形があったのですね。そういうことがわかるだけでも、なかなか貴重です。